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東星学園高等学校第56回卒業式 式辞

投稿日2023/3/1

 東星学園高等学校第56期の皆さん、ご卒業おめでとうございます。保護者の皆様方におかれましても、ご子息・ご息女のご卒業おめでとうございます。また、これまでの東星学園に対するご厚情に感謝申し上げます。

 さて、卒業生の皆さん。とういう3月1日卒業式がやってきました。毎日朝起きて、東星学園に通ってきたあなた方は、明日から東星に来なくてもよくなります。来てもあなた方のための授業は準備されていません。

 授業といえば、皆さんが高2のとき、私は1年間、皆さん方のキリスト教倫理も授業を受け持ちました。前期は徹底的に戦争の愚かさを、皆さんと分かち合いました。最初に、中居正広さん主演の映画『私は貝になりたい』を見ました。全部も終わった後、感想を書いてもらったところ、その映画の結末が、ハッピーエンドとならなかったことに、皆さんの多くが違和感を抱いていました。しかし、戦争にハッピーエンドはあり得ません。

 沖縄の地上戦を描いた『白旗の少女』、黒木瞳さん主演の『二十四の瞳』、そして、戦後のパプア・ニューギニアの女性の姿を描いたドキュメンタリー映画『戦場の女たち』。どの映画も戦地の兵士だけではなく、一般市民、特に、弱い立場に置かれていた女性や子供たちが犠牲になったことを皆さんと一緒に学びました。

 高2前期は全部、戦争の話でした。戦争は一度始めてしまうと、終戦後も深い傷跡を残すことを半年かけて、皆さんと共有しました。あれから半年も絶たないうちに、この地球上でまたしても愚かな戦争が始まってしまうとは思ってもいませんでした。しかも、その戦争の一方の当事国は、実は日本の北の方で国境を接している国です。なんだか卒業式にふさわしい話でないように思われるかもしれませんが、いま、私たちがこうしている最中にも、戦火は広がっていることを忘れてはなりません。

 2年生後期に観ていただいた映画の中で、皆さんにとても評判の良かった映画は、『遠い空の向こうに』という、高校生がロケットを飛ばすことを夢見て、とうとうそれを実現させるという映画でした。あの映画の中でライリー先生は病床で、夢の実現を目指している少年にこう教えたのを覚えているでしょうか?

 「時には他人の言う事を聞いてはいけないの。自分の内なる声を聞くの」。もう一度言います。これは皆さんにも是非覚えておいてほしい言葉の一つです。

 ところで、皆さんにとってのお一人お一人の『遠い空の向こう』はどのように映っているでしょうか。どうか皆さんも遠い空をいつでも忘れないでほしいと思います。皆さんは既に18歳ですから、これまで生きてきた中で、楽しいことばかりではなかったでしょう。人に依るかもしれませんが、皆さん方の書かれた『卒業の心』をお読みしたところ、苦しいこと、辛いことの方が多かったという方もいらっしゃるのかと思います。でも、どうか皆さん、いつでも遠い空を目指してください。いつも上を向いて空を見上げてください。どんよりとした雲があなたを覆ってしまう暗い日もあるでしょう。大嵐が来て立っているのも辛い日もあるかもしれません。小雪が舞い悲しみに凍り付く日もあるかもしれません。しかし、そんなときにも、その雲の向こうには、その嵐の向こうには、その寒さの向こうには、輝く青空が広がっていることを忘れないでください。孤独に苦しむさみしい夜にさえ、夜空の彼方には満天の星空が輝いているのです。

 ですから皆さんは、いつでも上を向いて、涙がこぼれそうになっても上を向いて、歩いて行ってください。いつか必ず青い空があなたに向かって微笑みかけますよ。

 この式辞の冒頭で、皆さんは明日から東星学園に来なくていいのですと申し上げました。あなた方のための授業はもう準備されていないと申し上げました。しかし、東星学園には、いつでもあなた方が戻って来られる居場所があります。どうか、自分の青い空が見えたとき、知らせに来てください。一緒に喜びたいと思います。見上げても、見上げても青い空が見えないときにも、どうか戻ってきてください。一緒に空を見上げてくださる先生方が待っています。空を見上げる気力さえないとき。そんなときこそ、ここ、東星学園はあなた方が帰ってくる場所です。

 私は、常々、入学前の生徒の皆さんに、「あなたが入学する学校、そこがあなたにとって一番の学校です」と言い続けてまいりました。あなたが卒業する東星学園はあなたにとって一番の学校だったでしょうか。その答はあなた方の中にあることでしょう。しかし、卒業して行くあなた方は、東星学園にとって、一番の生徒でしたよ。

 どうか皆さん、お元気でいらしてください。

2023年3月1日 東星学園高等学校 校長 大矢正則

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