今日の朗読箇所は、待降節第4主日の福音で、「聖母訪問」と言われる箇所です。ルカ福音書によれば、天使がマリアに、男の子を身ごもっていると告げられたとき、同時に、天使はマリアに、その彼女の年老いた従妹(いとこ)であるエリザベトもまた、初めての子を身ごもっていると知らせました。それを知ったマリアは、天使が去っていた後、急いで、自分が住んでいたガリラヤから、山里に住むエリザベトのもとへ向かいます。この旅には三日間の時間がかかったと言われています。しかし、身重のマリアが、あえてこの旅をしたのには、二つの目的があったのではないかと考えられます。一つ目は、年老いて身ごもった従妹エリザベトのお世話をするためです。心優しいマリアは、自分のことはさておき、年老いた妊婦エリザベトにお祝いを述べ、出産準備のお手伝いをしようとしたのではないでしょうか。実際に、マリアは、エリザベトのもとに3か月間留まり、お世話をしています。二つ目は、自分の身に起こった、神の子を宿すという出来事に大きな不安と喜びを抱き、それを年配の従妹エリザベトに相談するという目的です。
ですから、エリザベトのもとに着いたとき、最初に挨拶をしたのはマリアのほうでした。この挨拶の意味は、自分の身に起こったことを話したという意味です。つまり、自分は、神の不思議な業(わざ)によって、神の子を宿したということを、エリザベトに伝えたのです。そのマリアの話を聞いたとき、エリザベトには何が起こったでしょうか。今日の朗読箇所41節によれば、「マリアの挨拶をエリサベトが聞いたとき、その胎内の子がおどった。」とあります。そうです。信仰深い人であったエリザベトは、何の疑いもなく、素直に従妹マリアと、そして、そのマリアと自分自身が信じる神に信頼を寄せ、お祝いの言葉を伝えたのです。このとき、マリアのお腹の中には主イエスが既に宿っていました。そしてエリザベトもまたお腹の中に赤子を宿していました。したがって、エリザベトの胎内の赤子が、主イエスに出会って喜びおどった最初の人であると言えます。
つまり、赤子と赤子との出会いが、人類史上最初の救い主イエスと人との出会いだったわけです。ここに、救いの神秘が隠されています。赤子は、特に胎内の赤子は、既に一人の人間として考えられますが、実に小さく弱い存在です。そんな胎内の赤子同士の出会いが、人類と神との最初の直接的な出会いとなったわけです。それまで、主なる神は預言者を通して言葉で呼びかける神でした。しかし、今や、主なる神は、イエスという人間の姿をした存在として私たちのもとに来てくださったのです。
これが、待降節第4主日の福音朗読箇所の伝えるメッセージです。
校長 大矢正則