中学校・高等学校

第60回 東星学園中学校・高等学校入学式 式辞

投稿日2024/4/9

 新入生の皆様、ご入学おめでとうございます。保護者の皆様におかれましても、お子様方のご入学をお祝い申し上げます。そして、大切なお子様を東星学園に送り出していただき、あるいは、小学校から、中学校から引き続き東星学園を選んで進級させていただいたことに厚く御礼をお申し上げます。

 さて、カトリック学校や教会で、皆様方のような若い人たちが好んで歌う歌の中に、『なかま』(傍島聖雄作詞・作曲)という歌があります。こんな歌詞の歌です。一番だけ読んでいます。

  ♪それぞれが違う場所で生まれて育ち、違う足跡を残し、道を歩んできた。
  強い力によって、道が重なり合って、今ここに集まった。
  キリストのもとにあって、共に祈っている。♪♪

 この歌詞は、まさにカトリック学校の入学式の意味を、私たちに教えていると思います。

 ここにいる中学1年生が生れたのは、2011年4月2日から2012年4月1日までの間であり、高校1年生が生れたのは、2008年4月2日から2009年4月1日までの間です。東日本大震災直後の年度である2011年度に生まれた国内の新生児の数、つまり中1の皆さんと同じ年の人の人口は105万人余り、そして高1の人たちの誕生年度である2008年度の出生数は109万人余りです。昨年度の出生数は約76万人弱でしたから、今よりも30万人も多くの新生児、つまり赤ちゃんが誕生していたわけです。中1の皆さんおひとりお一人は、国内の中1の中の105万分の一の存在であり、高1は109万分の一の存在です。地球レベルで考えれば、中1の皆さん、高1の皆さんともに、それぞれが同じ年の人の中の、約1億分の一の存在であるといえるでしょう。他の学年の皆さんも同じです。皆さんはそれぞれお一人おひとりが、世界中の同級生の1億分の一の存在です。

 同級生1億分の一の存在であるお一人おひとりは、それぞれ違う場所で、違う時刻に生まれました。そして、それぞれが違う環境で育ってきました。生まれた場所も時刻も同じであり、しかも同じ環境で育ったという人は誰一人としていません。たとえ双子、三つ子であっても、微妙に生まれた時刻は異なっていますし、まったく同じ環境で育つということはあり得ません。極めて近い環境で育ったとしても、誰一人として同じ人間はいません。このことを、私は、人は一人ひとりがユニークな存在であると表現しています。ユニークとは、唯一ということです。ここにいるすべての人は、いや、地球上のすべての人はユニークな存在であり、それゆえに、交換不可能な、不可欠の存在なのです。それぞれに重いいのちが宿っています。このいのちの重さを人権といいます。すなわち、人権とは、すべての人間が、たった一つの、たった一人のいのちであることに基づいて持っている固有の価値、つまり、ユニークさを肯定する権利なのです。忘れないでください。人権とはユニークさの肯定です。人権とは難しい法律や、ましてや、神様まで登場させて語るような難しい問題ではないのです。そこに人がいれば、そこに人権があります。

 私はたった今、人権について語るには、神様を登場させるまでもないという話をいたしました。

 ところで、ユニークな存在とは、人権があるからユニークなのではありませんよね。ユニークが先にあります。つまり、存在即ユニークなのです。

 そんなユニークとも言い換えられる存在が、何十人、何百人と集まって、いま、ここにいます。このことを、先ほどの歌は、「強い力によって、道が重なり合って、今ここに集まった」と歌い上げています。

 強い力とは何でしょう。東星学園が拠って立つところのキリスト教では、この強い力のことを、神の意志と言ったり、恵みと言ったり、計らいと言ったりします。しかし、私は、この強い力を『福音』と呼びたい。この『福音』こそ、あなたを招いているもの、あなたに伝えたいと神様が思っておられるものです。そして、東星学園が皆さんにお知らせしたいと思っている事柄です。『福音』とは、よきたより、よき訪れ、よき知らせです。グッドニュースなのです。どんなによいお知らせなのか。それは、「あなたに、ここにいてほしい」というお知らせです。

 “Glad you are here!” 
 神様はいつでも、こうメッセージしています。

 「あなたにいてほしい」「あなたにきてほしい」。どこにでしょうか。ここにです。その、「ここ」という場所は一人ひとりにとって異なります。ですから、私はいつもこのように申し上げています。「あなたが入学する学校、そこがあなたにとって一番の学校です」

 新入生の皆さん、ご家庭の皆様、在校生の皆様、そして教職員の皆様、今日からここで、「柔らかで、刺のない、温かな心」をもって、共に関わり、祈ってまいりましょう。

2024年4月9日 東星学園中学校・高等学校
校長 大矢正則

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