東星学園の中高では、平日は毎日、お昼休みに沈黙のお掃除を全員で行います。そのお掃除の前に、教師が何か一言、全校放送します。以下が、今日の放送の原稿です。
1700年代のアメリカ合衆国で活躍した政治家であり、著述家であり、物理学者でもあったベンジャミン・フランクリンの自叙伝を最近読み返しました。その中でフランクリンは、自らの信念を13の徳目にまとめました。一番目が節制、二番目が沈黙、三番目が規律、などなどと続くのですが、最後の13番目に謙譲という徳目を上げており、その内容は13の徳目の中で最も短く、“Imitate Jesus and Socrates.”、つまり、「イエスとソクラテスを見習うべし」とのみ書かれています。イエスについては、皆さんは東星学園でよく学んでいると思いますが、ソクラテスという人は、紀元前のギリシャの哲学者で、西洋哲学の基礎を築いた先哲です。「問答法」や「無知の自覚」でよく知られています。ソクラテスが口にしていた言葉の中で、有名な言葉としては、「私が知っているのは、自分が何も知らないということだけだ。」あるいは、「自分を知ることは、すべての知恵の始まりである」など多数あります。
ところで、新約聖書の福音書を読むと、イエスもしばしば問答法を用いて人々を真理へと導いており、共通点があります。また、イエスもソクラテスも自分自身による著作を著さなかったという共通点もあります。因みに今日はユネスコが定めた「世界哲学デー」です。イエスとソクラテスの異なる点は、ソクラテスが哲学者であったのに対して、イエスは超越者、つまり神であったということでしょう。哲学者ソクラテスをよりよく知りたい人は弟子のプラトンが書いた『ソクラテスの弁明』という本がおすすめです。超越者イエスをよりよく知りたい人は、より多く沈黙することをおすすめします。
校長:大矢正則